夢十夜 十 光
こんな夢を見た。
無限に続くまばゆく清らかな白光。
世界は光に包まれている。
その光のなか、ゆったりと翼を広げた青い龍鳥。その翼の下に護られたオパール色の光の繭。
眠り続ける白い髪の恋人を、大事に腕に抱いている男が、ふと瞳を上げると龍鳥に笑いかける。
「冰玉、聞こえっか? またアシュレイの奴、ティアに話し掛けてんぞ。いーかげん黙って待つのに飽きたんだろうな、あいつらしい」
ゆったりと微笑むかれに、龍鳥がその長い首をかしげて答えるようにくちばしを開くより先に、
(うるさいぞ、柢王――)
次空のどこかから、思念が声となって届く。
(おまえこそ、よくも毎日毎日、桂花愛しているとか甘いことばっかり言いやがって。鳥肌が立つだろーがっ)
激しい口調なのにどこか、苦笑いを含んだようなその思念に、繭の中からは笑って、
(だって、こいつ寝顔もかわいーんだもん。目が覚めたら何から話そうかってついあれこれ考えちまうんだよなー)
のろけるような口調に遠くの思念はあきれたように、
(相変わらずだなっ。とにかく、人の話を聞くのはやめろっ)
(聞いてるんじゃなくて聞こえんだよ。仕方ねーじゃん)
このひとつの世界では存在の全てが響きあう。殊に、愛に満ちた言葉は――この次空は無上の愛でできているから。
笑う声に、遠くの思念は舌打ちするように、
(いーから耳塞いどけっ)
「ったく、あいつは――」
次空の別の場所で、虹色の繭に包まれた赤毛の男がふてくされたように肩をすくめる。
傍らに眠る人の、月光を集めたような髪、美しい面の額に輝く御印にルビー色の瞳を当てて、
「それもこれもみんなおまえがさっさと起きて来ないからだぞ、ティア。おまえも、桂花も、さつさと目を覚ませばいいんだ。心配しなくてももう何も苦しまなくていいんだから」
言葉と裏腹、優しい声でささやいて、眠る人の白い指をそっと握りしめる。
優しく、永遠の、曇りない純粋な愛。
その光に包まれて、恋人たちは大切な人の目覚めを待ち続けている。
神々の時代は過ぎ去ったとか、他の次空ではいまも様々な変動が続いているとか。いつ何がどう変わり、五界と呼ばれたそれぞれの時空がこの先どう変わり、最後にどうなるかは誰にもわからない。
望むなら、ひたすらな自我を燃やし尽くして生きる生も、はるか高みで超然と生きる生も、選ぶ全ての生き方で生きる道は百万通りでもある。
でも、いまは関わりない。
恋人たちはもう知っている。
大切なのはいま、腕の中にいるひとりの人。
お互いが、存在する、そのことが唯一の真実。
だから二度と、つないだこの手は離さない。何が起きようと、何がどう変わろうと、つないだ手は離さない。この光のなかで、目覚める時を、百年でも千年でも待ち続ける。
おまえを想う気持ちこそが、いま、この世を包む、まばゆい光だ――。