投稿(妄想)小説の部屋 Vol.3
ドンドコドコドコドンドゴドン
ドンドコドコドコドンドコドン
紫が舞い乱れる。
天空界のアレ○リア!?
ひとつ・・・ふたつ・・・みっつ・・・・・・・・やっつ。
良く言えば神秘的。
悪く・・・でなく、常識人から見れば奇妙なことこのうえなく。
「―――効果なしか・・・」
「―――残念ながら」
一幕を終え、紫の衣を纏った八人は額の汗をふきふき岩戸前に集まった。
だが無常にも岩戸は堅く閉ざされたまま。
「守天様には困ったものだ」
「身を隠されて早三日。そろそろ人界にも影響が出始めますぞ」
「分かっとるわい。だから、こうして我々の素晴らしき演舞を披露してるではないか」
「・・・・・あっ、あの〜。やはり、いつもの通りお力をお借りしたほうが・・・」
思い切って発した新米八紫仙をギロッと睨みつけたものの、それが最良の策と残り七人は肩を落とし頷いた。
「アホですね」
「―――――だな」
柢王は八紫仙からの依頼文を机に放った。
「ティアもティアだ。ボイコットするなら上手くやれって、あんだけ教えてやったのに」
「疲労もたまりますよ。全て一人で処理されてるんですから」
―――誰かさんと違って―――チラッと桂花は柢王を見る。
「うっ・・・違うって、そもそも疲労の根本は」
「サルでしょ」
「―――――」
「ほら、行くんでしょ」
「おまえもな」
差し出された布を額に巻き、桂花の肩を抱き柢王は扉を開けた。
「ティア、いいかげんにしろっ!!」
渋る八紫仙をなんとか帰したものの、ティアはいまだ岩戸の奥。
「他の手を考えるしかありませんね」
「手はうってある」
言ったすぐ後、風をきってアシュレイが空から降りてきた。
「おせーぞっ」
「わるいっ、それよりティアは!?」
アシュレイはぐるりと周囲を見回す。
「『緊急事態』ってデマじゃないだろうな」
嘘ならただじゃおかないと柢王につめよる。
「そういうこと言うかぁ〜? ティアは三日前からそこに閉じこもってんだそうだ。おまえも来たことだし後はよろしく」
じゃあな、と桂花と背を向けた柢王をアシュレイは慌ててひきとめる。
「待てっ!!ちょっと待てって・・・わるかった」
ボッソリと謝罪したアシュレイに柢王は肩をすくめむきなおる。
柢王をひきとめれたことに胸をなでおろし、アシュレイは岩戸にあゆみよった。
「ティア、出てこいよ」
「なぁ・・・頼むからさ」
こういうのは苦手だ。誰に対しても機嫌などとったことないアシュレイだ。
やれやれ〜柢王もアシュレイの横で再度呼びかける。
「ほらアシュレイもきたぜ。 さっさと出てこい」
何度となく呼びかける二人を桂花は木に寄りかかり傍観。
だが進展の影すらなくとうとうアシュレイが切れる。
「おいっ!!いいかげんにしろよっ!!」
下手に出てりゃ―――!!我慢も限度と岩戸に炎を投げつけた。
―――――バチッ―――――
炎は戸に当たった途端、火花を放ち消え失せた。
朱光剣、斬妖槍で斬りかかったもののやはり効果はない。
「勝手にしろっ!!」
「おいおいっ、待てよ、待てッ!!」
捨て台詞を投げ背を向けたアシュレイを慌てて柢王がつかまえる。
「閻魔様にバレりゃ謹慎だぞ」
「自業自得だろっ」
「―――無責任な」
「なんだとぉ!!」
今まで傍観してた桂花のつぶやきにアシュレイは喰ってかかる。
「相変わらず勝手なことだ。守天殿を追い込んだのはどこの誰だか考えてみるんだな。 柢王、帰りましょう」
柢王は立ち去ろうとする桂花を宥めてから、アシュレイに向き直った。
もちろん冷ややかな紫の瞳に謝罪を入れることも忘れずに。
「ティアは疲れてんだぜ。あいつを息抜きさせれるのはおまえだけだろ」
「・・・・・」
「いつから顔出してないんだ?」
「二十日くらい・・・その倍かも・・・」
「ハァッ―――――」
そりゃ、むくれるわな〜と柢王はガックリとため息をつく。
柢王の横でアシュレイもめずらしくうな垂れる。
「どうするかなー」
柢王はあえて口に出し、桂花を窺い見る。
呆れるのは毎度のこと。
仕方ないですねと桂花は口を開く。
「―――そういえば守天殿は衣装を作られてました。自らデザインなさって」
「服?」
「ええ。とても楽しそうに。・・・あれなら〜」
「それでいこう!!」
「でも―――――」
桂花はチラッとアシュレイを見る。
「何だよっ!!」
「絶対的協力がなければ・・・」
がなりたてるアシュレイを顎で指し、柢王に無言で告げる。
―――なるほど・・・素早く理解した柢王はアシュレイ承諾にかかる。
「協力するよな? な? 何が何でも」
「―――わかった、するっ、すりゃいいんだろっ」
「そうそう、すりゃいいんだ」
「その言葉、忘れずに」
念を押すと桂花は「用意してきます」と天主塔にむかった。
―――――数十分後―――――
「なっ・・・なんで俺がっ・・・こっ・・こ・・・こんなの着れるかっ!!!!!」
「協力すんだろっ!!」
「『何が何でも』でしたね!!」
暴れるアシュレイを柢王と桂花が押さえつける。
その騒がしさは八紫仙の乱舞どころでない。
ティアの服・・・そう、それは恋人宛と決まってる。
「でっ・・・ケドこれ服ってより布っ」
「この斬新さがわからないとは、やはりサルッ」
ほとんど言葉にならないアシュレイに桂花は冷たく返す。
だが冷ややかな紫の瞳の奥は、いつになく楽しげに輝いている。
―――どこが斬新だか・・・ありゃ紙切り、いや布切り工作じゃねーか。(by柢王)
―――禁断症状も最終段階だったんですよ。(by桂花)
視線のみで意思疎通する柢王、桂花。
二人は何とかアシュレイを口車に乗せ岩戸前に立たせることに成功。
すると!!
―――――ギギッ―――――
堅く閉ざされた岩戸が開いた。
中からニュッと腕が伸び。
―――――ガシッ、ズルッ―――――
アシュレイをつかみ一気に引きずり込んだ。
―――――ギギギッ―――――
そして岩戸は元通り。 堅く堅く閉ざされた。
そのスピード、コンマ002秒。
「―――シュラム並みですね」
「・・・シュラム以上だ」
「―――ですが柢王」
「・・・ああ。少なくとも三日は延長、いや延泊だな」
残された二人は深いため息をつくと、黙ったまま岩戸を後にした。
―――――只今充電中(再開三日後・・・の予定)―――――
と岩肌に書き付けて。
Powered by T-Note Ver.3.21 |