投稿(妄想)小説の部屋 Vol.3
夕陽が差し込みはじめた部屋の中にほのかに漂う甘い香り。
それがオレの好きな貴方の香り。
その香りが、ふわりとオレの身体を包むと同時に温もりが背に伝わる。
「ごめん、忍。起こしてしまったね」
微かに身動ぎしたオレの耳元に一樹さんの声が滑り込んだ。
ひと時の戯れのあと、気だるい心地よさの中に響く甘い吐息のような貴方の声。
でも、もう時間が…とでもいうように背に伝わる温もりがゆっくりと遠ざかる。
もう少し。
もう少しだけこうしていたい。
身体に回されていた片腕を拘束する。
その腕を掴むオレの指はほんの少しだけ震えていて、慌てた貴方がオレの顔を覗き込んだ。
「ごめん…なさい」
きょうはいつになくナーバスなオレ。
「絶対…」
それだけ言うのが精一杯で、あとの声は嗚咽になる。
でも。
貴方は続けてくれた。
「離さないよ、忍」
一樹さんの温もりがオレの胸元に戻ってくる。
そして。
貴方の唇がオレの唇に落とされる。
愛しくて
愛しくて
その想いが強くなればなるほど、同じように不安も強くなる。
公にできない
同性同士の恋愛。
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