投稿(妄想)小説の部屋 Vol.3
★「年の差…」…のつもりです…
西領の王太子カルミアは、憤慨していた。
憧れの守天様の、ティアランディア様の恋人が、あの野蛮人だなんて、ありえない!
しかも、あの兄様が、嫌がる野蛮人を無理矢理、あんなこともこんなことも言いながら、組み伏せるなんて、きっと柢王殿の側近の魔族に、性格が変わるような薬を作らせて、野蛮人はそれを使ったに違いない、と。
ティア兄様に相応しいのは、決して乱暴者などではなく、美、知、品が揃った相手じゃないと。そう、自分のような。
兄様の目を覚ます事ができるのは、自分しかいないと言う結論に辿り着いたカルミアは、守天と会える機会を得て、張り切っていた。
今回も野蛮人が一緒だが、何とか撒いて二人きりになれる時間を作り、兄様に彼と別れるよう、説得するのだ。
しばらく、ヤキモキと待っていたが、ついにそのチャンスが訪れる。
「ティア兄様、二人きりでお話をしたいことがあります」
カルミアは守天を物影へ連れ込んだ。
「僕にはどうしても、アシュレイ殿が兄様を幸せにできると思えないのです。とても強い武将と聞いておりますが、彼の振る舞いは余りにも粗暴で、兄様にも暴力をふるってるそうではないですか!」
カルミアの脳裡には、ちゃぶ台(天界にあるのか?)をひっくり返すアシュレイと、よよと泣き崩れるティアの姿が映っていた。
「暴力だなんて」
ティアが艶っぽく微笑む。
「アシュレイの場合、照れ隠しでつい手がでてしまうだけなんだよ。彼の愛情表現なんだ」
カルミアの脳裡は、「こ〜いつう〜♪」と言いながら、指でちょんとティアの頭を突くアシュレイと「テヘ♪」と舌をちょっと見せるティアの姿に変わっていた。そして、海辺(天界にあるのか?)で、ウフフ、アハハと追いかけっこする二人に。
一瞬、ホンワカとしてしまった自分にカツを入れ、カルミアは、守天の説得を続ける。
「僕では駄目なのですか?僕とて、兄様を想う気持ちは負けておりません」
「カルミア、ごめんね。私はアシュレイが好きなんだ。君のことは弟のようにとても可愛いと思うけど」
「それは!僕が幼いから、兄様と十も年が離れてるからですか?!」
「年の差なんて関係ないよ。私はアシュレイの魂を好きになったのだから。彼が一歳でも百歳でも構わない」
と、言いつつ、うーん、一歳児の魂を好きになるってどうかなあ、百歳ってのも。とか冷静に考えてるティアであった。
が、
(魂を好きになる!)
カルミアは、感動で胸が熱くなっていた。
(兄様は、肉体を離れ、精神世界の中で彼の魂と出会ってしまわれたのですね?その出会いは時を越えて永遠になってしまったのですね?)←意味不明
どう考えても思い切り俗世間の現場を目撃したはずのカルミアだか、すっかり守天に洗脳されている。(守天としては、洗脳したつもりは毛頭ない)
同じセリフをアシュレイが言ったら、また、子供みたいなことを。幸せな方ですね、的な皮肉の一つや二つ、五つや六つも返してるところだろうが。
「カルミア、君に恋人が出来たら、この気持ちが解るようになるよ。私のことは、それこそ兄として慕ってくれてるだけなのだから」
と、ティアはにっこりと微笑む。
「ティア兄様…」
カルミアは、目をうるうるさせながら、兄様が本当に幸せなら、と二人の仲を認める気になっていた、その時。
「こんなところにいやがったのか!」
と、アシュレイ登場。
「心配して探してくれたの?」
ティアが嬉しそうに駆け寄り、アシュレイにベタ〜ッと抱きつく。
「バッ、馬鹿!ベタベタするなって言ってんだろ!」
アシュレイは、顔を赤らめながらも、怒った声でティアの頭をはたいた。
それこそ、「テヘ」と言う声が聞こえそうなティアの顔が見えてないカルミアの脳内映像は、ちゃぶ台返しバージョンにすばやく置き換わった。
(やっぱり暴力を!!アシュレイ殿は危険です!僕、必ず兄様をお救いいたしますからね!)
カルミアは、再び打倒(?)アシュレイに燃え始める。
そして、カルミアの想いは冒頭に戻る…。頑張れ、カルミア!
Powered by T-Note Ver.3.21 |