投稿(妄想)小説の部屋 Vol.3
★一応、年の差ですが、別世界の無理矢理設定です。年の差は難しいっす〜。次回(何時?!)のお題が、邪・サ○エさん 再 だったりすると嬉しい…
「アシュレイ。君を愛してる。結婚して欲しい」
親友だと思っていた奴-ティアランディア-にそう告白された時、心臓がひっくり返るかと思うくらい驚いた。
結婚?!俺たち未だ14歳だぞ!つか、てめぇは未だ13歳じゃねえか。いや、それ以前に男同士だぞ?!!
そう答えようとしたら、胸に締め付けられるような痛みが走り、意識が遠くなる。
バカ野郎、心臓がひっくり返るどころか、止まりそうだ。おまえが変な事言うから…。
くちなしの香りがする。
あいつが好きでいつも身にまとってた香り…。
「...レイ、アシュレイ?」
誰かが俺を呼んでいる。
あの、バカな告白をしてきた親友ティアの呼び方に似てる。でも、あいつはこんな低い声じゃないし…。
「アシュレイ、判るか?」
ゆっくりと目を開けると、心配そうな綺麗な顔をした男が見えた。ティアに良く似ていたけど、うんと年上の大人の男だ。ティアに兄貴がいたっけ?
「…どこ…?」
男は、ほっとした顔をすると、ここは病院だと教えてくれた。ちくしょう、やっぱり心臓が止まったんじゃねえのか?今度ティアに会ったら、絶対にぶん殴ってやる。
「痛いところは無い?あ、未だ起きちゃダメ。眠かったら寝ても良いからね」
起きようとした俺をそっと押し戻し、冷たくて優しい手で俺の前髪をかきあげる。なんだか気持ちイイ…。
「俺、どうなったんだ?」
「…心臓の手術をしたんだよ。意識もしっかりしてるようだし、後はゆっくり休んで体力をつければ元通りになるよ」
「手術?!」
そんなことになってたとは!あいつ…一発じゃ足りねえ、百殴りだ!
「おまえ、医者か?」
男は一瞬、なんでか寂しそうな顔をする。
「ん、君を手術したのはこの私だ。さあ、もう疲れたろう?しばらくお休み」
男はもう一度髪をなでてくれた。こいつの纏う空気はティアによく似てて、ティア以外の他人がいると眠れない俺だが、気持ちよくなってそのまま眠ってしまった。
その後、俺は驚愕の事実を知らされる。
俺が倒れてから、十年が過ぎてるって言うんだ。
言ってることが難しくてよく判らなかったけど、俺がぶっ倒れたのは、今の技術じゃ治せないような病気のせいで、ティアは俺を氷付け?にして時間をかせぎ、医者になって俺の病気を治す研究に十年かけた、ってことらしい。
昔、スキップすると年に関係なく外国の大学へ行けるとかで(スキップなんてガキの頃以来やってねえけど、なんで大学に行けるのか全くわかんねえ)ティアは外国へ行けって言われてたけど、俺と一緒にいたいからイヤだと断ってた(俺達、親友だからな!)。結局、今回スキップしたってことらしい。あいつスキップなんてヘタクソだったのにな。
で、俺の手術をしたって医者がティアの十年後だって言うんだけど、俺には赤の他人のオッサンにしか見えねえ。そう言ってやったら、ティア(の十年後)のヤツ、すっげ落ち込んでたけどさ…。ちょっと可哀そうになったから百殴りは許してやった。
十年後だなんて、ショックだったけど、病室から出てない身としては、十年後の世界が想像できない。ほんとにあの男がティアの十年後だとしたら、それだけが実感だ。…もう、あいつがティアだって、本当は判っていて認めたくないだけなのかもしれないけどさ。
同じくらいの身長だったのに、頭一つ分も差がついてるのも気に入らないし、同い年の親友には、俺が護ってるという誇りとプライドがあったのに、こいつには俺のおかれた状況の不安も有って、つい甘えてしまう。だから、ティアと認めたくないのかもしれない。甘えたいだなんて…、今だけだからな!
それにしても、こいつは「診察」って言いながら、やらしいことをしようとするので、油断がならない。
「私は医者だよ?なんでそんなに肌を見せることを恥ずかしがるかな。大体、ずっと一緒に寮のお風呂にはいってたじゃない。それに、私は君の知らない、君の体のことも知ってるんだよ」
俺の知らない、ってどこだよ!…(汗
「ああ、あんな綺麗な心臓は初めて見たよ。ほうっ…」
そんなものを思い出してうっとりするなー!こいつ絶対変態だ!
俺はひたすら、魔の手?を排除してるが、都度「可愛い」と言われるのはどうしてだ?!
「てめえがティアだっていうなら、てめえの方が可愛かったじゃねえか。心細いだの、雷が怖いのと、しょっちゅう怯えて俺のベッドに潜り込んで来て…」
ティアはクスクス笑いながら、
「もう!本当に君は可愛すぎるよ…食べちゃいたい…。君が病人じゃなければね」
と、蕩ける様な目で見つめてくる。意味わかんねえ!
しがみついてくるティアに、「俺が護ってやる」と、いつも安心させてたのは、この俺のはずなのに。
「ねえ、私のプロポーズの答え聞かせて」
げ、それって未だ有効だったのか?十年も経ってるんだろ?俺にとってはついこないだのことだけど…。
「だから…。俺は未だ14歳で…」
「君は、もう24歳なんだよ」
そうだった…。信じられないけど….。
「俺たち、男同士だし」
「ちゃんと籍の入れられる国があるよ」
なんだそれ!知らねえよ!!
「大体、おまえ昔から女にもてもてじゃん。おまえの女、たくさんいるんだろ!なんで俺に構うんだよ」
「正直に言うよ。確かに、もう君を治すことなんかできないんじゃないかと、自暴自棄になって、女性に逃げたときも有った。でも、君を失うことなんが考えられなかった。今は一切女性とは付き合ってない。君だけだよ。君だけを愛してる」
「や、やめろ!真剣な顔で言うな!今の俺には無理だ…。そーゆーこと考えられねえ!」
「今の?じゃあ、考えられるまで待つよ」
「待つなよ、待ってたって俺...」
「もう、十年待ったよ。いくらでも待てる。君のことなら。…ただ…。私ってそんなにオッサン?」
そりゃ、俺の親友に比べたら…。ティアも大人っぽかったけど、もっと大人の男っていうか、包容力があるというか。相変わらず細っこいのに、あの頃俺にしがみついてきた腕より全然力強くて、こいつの側にいる安心感も、あの頃ティアがくれたそれとは違って…。
「待つけど、それだけもっとオッサンになってしまうよ…」
「オ、オッサンはきらいじゃねえ!」
あいつが悲しそうな顔をするから、つい、フォローしようとして、訳わかんねえことを言ってしまったら、又クスクス笑われてしまった…。
「コールドスリープは脳細胞に影響がある可能性があるから、今日は簡単なテストをするよ?」
「テスト?!」
「…そんな難しいものじゃないから、構えないで」
うー。テストなんて俺の一番嫌いな言葉だが、これ以上バカになってたら困るので、一応テスト用紙を眺めてみる。
「7×7はしじゅう…????どうしよう!俺、マジでバカになってる!!」
「…君、昔から7の段が苦手だったよね…。解らないのはとばして良いから続けて。落ち着いて考えれば解るからゆっくりね」
俺の苦手なこと知ってるなんて、やっぱりティアの十年後なんだろうな。俺は教師の言ってることが理解できなくて、いっつもティアが後で解り易く教えてくれてた。だから、俺が苦手としてることとか、あいつには全部判ってる。
それにしても元気がないのは、俺がティアだと認めてやらないからか?
テストは、落ち着いてみれば、この俺でもなんてことはなかった。流石に九九も思い出したし。
「俺の脳ミソ、大丈夫だったんだろ?いつ退院できるんだ?」
「…君の姉上-グラインダーズ殿がこちらに向かっている。姉上とお話してからね?グラインダーズ殿は、遅くなったことを詫びてらしたけど、お忙しい方だからね」
わかってる。3歳の時に寮へ入れられてから(ティアとの付き合いはそれからだ)、親父とは何度も会ってないし、姉上は親父の補佐として働き始めてたから、最近(って十年前か?)は姉上にも殆ど会ってなかった。
親父は俺を跡継ぎにしたがってたけど、俺は姉上のほうが相応しいと思ってる。血筋的にも、人間的にも。
姉上は相変わらず綺麗だったけど、赤ん坊を連れていた。俺のガキの頃にそっくりな、赤い髪の坊主。
「ああ、アシュレイ!よかった、顔を良く見せてちょうだい」
姉上は俺に抱きつき、顔に何度も唇を押し付ける。ティアの視線がイタイ。
「ティアランディア殿、この子は息子のアーシェと言います」
「初めまして、アーシェ殿」
姉上は、赤ん坊をティアに紹介し、ティアの奴は、赤ん坊に「ちあー」とか言われて相好崩してやがる。なんか面白くねえ。
「アシュレイ、あなたの甥よ。父上の跡はこの子が継ぐわ」
え?親父は俺を諦めてくれたってことか?
姉上がティアに目で何かを確認し、奴は頭を振って応える
「アシュレイ、落ち着いて聞いてね」
次回予告
この後、アシュレイの人生を一転させる事実が発覚する!
二人の運命やいかに?!
(すません、5000字に納まらなかっただけです...)
★年の差…になりますでしょうか…
○年◇月△日 アーシェ1歳
アシュレイが魔族の毒で1歳児になってしまった。天主塔で預かることになったが、アシュレイとは別人格として、アーシェと呼ぶこととする。
私が傍にいないと眠れないだなんて、既に私無しでは駄目な体になってるということか?
今なら、アシュレイが望みそうなことなど全部解るし、理想の恋人になれる自信がある。
私のたったひとつのたからもの。
16歳年上の余裕で、会いに来てさえくれないような、冷たい恋人にならないよう、大切に育てよう。
◇年△月○日 アーシェ3歳
今日は文殊塾の入学式。
私のアーシェが、やっぱり一番可愛い。
悪い虫が付かないよう、毎日遠見鏡でチェックしなくては。
帰って来たアーシェに、気になる女の子はいなかったかと聞いてみれば、「えー、女なんか興味ねえよ。だいたい、ティアより綺麗な奴なんていねーし」と、可愛い事を言う。
ああ、早く成長しておくれ。
△年○月◇日 アーシェ5歳
生誕祭での正装は、誰にも見せたくないくらい愛らしかった。
ストロベリーブロンドに白いレースがよく映える。少し髪を伸ばさせてみようか。今なら女の子の格好も似合うだろうし。
これから毎年アーシェの肖像画を描かせよう。そして寝室に飾って寝る前の一時を癒しの空間に。
あ、私とのツーショットも良いかも知れない!早速明日画家を呼び寄せよう。
*年#月+日 アーシェ9歳
手足がすんなり伸びて、子供というより、少年の体型になってきた。
着せ替えごっこが楽しくてしょうがない。桂花なんて目じゃない。
アーシェにどの服が好みか聞いてみれば「ティアはどれがいいんだ?ティアの気に入ったやつがいい」と言う。冗談で少し色っぽい服を選んでみれば、すぐに着替え(デザインの意図が全く解ってない)、誇らしげに私に見せに来る。
ああ、絶対に私以外にはその姿を見せては駄目だよ…鼻血が止まらない。
#年+月*日 アーシェ12歳
12歳の誕生日…。そろそろ、あんなことや、こんなことも、教えて良い年だろうか。アーシェは同年代と比べても幼い。未だ早過ぎるだろうか。
そう思っていたらアーシェが真剣な顔で訴える。
「なあ、俺、何時になったらティアの本当の恋人になれるんだ?やっぱり、16も年下の俺なんてガキすぎて、おまえには相応しくないのか?俺、ティアを誰にも取られたくない...」
ルビーの瞳に涙を一杯ためて。
アーシェからの告白なんて、胸が震えるほどに嬉しいが、親子程も年の離れた私が、本当にこの可愛いアーシェの恋人になってよいのだろうか。
「年の差なんて関係ねえよ!俺、ずっとティアが好きだったし、一生ティアだけが好きだ!」
抱きついてきた、もう小さいとはいえない体を私も強く抱きしめる。
「ううう、アーシェったらなんて可愛いんだっ!」
「アーシェって誰だよ。何書いてんだ?」
ティアが驚いて顔を上げると、不機嫌そうなアシュレイ(現物)が、立っていた。
「アシュレイッ!」
大人二人が十分座れる大きな机を迂回するのももどかしく、ティアは机に乗るとアシュレイ目掛けてダイブした。
「わー!」
守護主天ともあろうものが、そんなお行儀の悪いことをするとは(しかも鈍臭いティアが!)思いもよらなかったアシュレイは逃げ損ね、抱きつかれて、床に押し倒された。
「ああ、アシュレイ!会いたかったよ〜!」
アシュレイはジタバタともがくが、この細い腕の何処にそんな力があるのかと言う程、がっちりしがみつかれて、外れない。
「退け!」
「アーシェのこと気になる?それってヤキモチ?」
「な訳ねーだろ!テメッ、燃やすぞ!」
「君の愛の炎で燃やし尽くして♪」
(ダメだ、こいつ、寝不足でおかしくなってる!)
アシュレイは、そう判断すると、何とか宥めすかしてティアを長椅子に座らせた。
「で?アーシェって誰なんだよ」
「君がこの前、魔族の毒で赤ん坊になった時、桂花の手前、アーシェと呼んでたんだよ」
「なんだと!まさか、魔族野郎に俺を触らせたりしてねえだろうな!」
「えー、君ってば桂花に懐いてべったりでさ、きれー、なんて言っちゃって。私には言ってくれな…!」
桂花の話をしたのは失敗だったと、ティアは溜息をつく。
どうして、滅多に寄り付かない恋人の姿を見ると、舞い上がってしまい、考え無しの言動をとってしまうのだろう。
つれない恋人に会えない淋しさを紛らわす為に、恋人が幼いまま元に戻らなかった設定で書き始めた妄想日記。
怒って自分を殴り飛ばして出ていってしまった恋人を思いつつ、うっとりと続きを書き始めるティアであった。
★年の差…ではないです。下記はそれぞれ繋がりもないです…
<ティア6歳くらい>
ある日のこと。
グラインダーズが、弟の額に唇で挨拶をしているのを、ティアは羨ましそうにじっと見ていた。
「ねえ、姉上にそうされるのってどんな感じなの?」
ティアはグラインダーズが去るとすぐアシュレイに尋ねる。
「別に…。ちょっとくすぐったいかな」
期待に満ちた目で、じーっとアシュレイを見つめるティア。
「なんだ?どうかしたのか?」と、アシュレイはなんでそんな目をするのか全く解らず尋ねる。
「どういう感じなのか私も知りたい。ねえ?」
と、おでこを突き出され、やっとティアが何を望んでいるのかに気付く。
勉強家のティアは、自分が知らないことがあるのが気に入らないのだろう。
だけど、だけど、オデコとはいえ、そんなこと簡単にできるかと、アシュレイは焦って「父上にやってもらえ!」と怒鳴った。
何故、姉ならいいのに、親友だと恥ずかしいんだろう?
「君、閻魔大王にされたいの?」と返され、あの巨体のでかい顔が近づくことを想像したアシュレイは、ぞっとして思いっきり頭をふるふるする。
自分だって、もっとガキの頃、父親がじゃれて顔や体にチュッチュしてきたのは、決して嬉しくなかったのだし。
「大体、父上とは滅多に会えないよ」
そうだった。ティアは親と別れて暮らしているから、ティアの家族の代わりになろうとアシュレイは思っていたのだった。でも、それとこれとは…。
「えっと…、そう、普通、男同士はしないんだ!」
当然、父親も男だという矛盾に気付いていない。
クラスのとりまきにやってもらえば、ということも思いつかない。
「だって…私には母上も姉上もいないし…」
ティアが望めば、天主塔中の使い女が列をなしていくらでもしてくれることなぞ、アシュレイは知らない。尤もそんなことをティアは望んでいないのだが。
ティアは寂しそうに俯きつつ、ちらりとアシュレイの様子を窺う。
優しい彼には無視できないセリフのはず。かなり心が動いてる気配。後一押しで落ちるであろうことは明白。
「グラインダーズ殿にお願いしてみようかな…。私も姉上のようにお慕いしてるし…」
アシュレイの顔が驚愕の表情に変わり、阻止しようと焦る。
「お、俺がしてやる!」
たとえ親友とはいえ、大切な姉上にさせたくないのか、大切な姉上とはいえ、親友にふれさせたくないのか解らないが、とにかくその状況だけは回避しなければと、恥じらいよりその思いが勝った。
ティアといえば、心の中でガッツポーズ。
「目をつぶれ!」
「どうして?」
「そういうもんなんだ!」
「ふーん?」
恥ずかしくて、ティアに見られたくなくて、無理矢理目をつぶらせると、アシュレイは勇気を出して、爪先立ちになり、そっと御印に唇をぶつけた。
「…フワフワして、ドキドキして、とってもあったかい…」
ティアは目をつぶったままうっとりと呟く。
アシュレイも同じ気持ちだった。姉にするときにはこんな気持ちにならないのに…。
ティアだからかな。ティアに触れると、いつも同じ気持ちになるような気がする。
「アシュレイありがとう。アシュレイの家族になれたみたいで嬉しいよ」
ゆっくり目を開け、ティアはアシュレイに抱きついた。
くちなしの香りに包まれて、アシュレイはもっとフワフワした気持ちになってくる。
家族にはなれないけれど、ティアとは家族みたいに一生一緒にいられるといいな、とアシュレイは思った。
そしてティアは、アシュレイにとって家族以上の存在になってみせると、決意を新たにするのであった。
<ティア 13歳くらい?>
柢王が美味しいお酒を手に入れたからと、今日はティアの私室でアシュレイと3人で飲み会。
前回の飲み会では、ティアは最初に酔いつぶれてしまい、アシュレイの膝枕で寝てしまうという失敗を犯してしまった。
失敗1:酔っ払ったアシュレイ達の会話を聞いてない(普段でないような話が出たはず!) 失敗2:意識がなかったので膝枕の感触を覚えてない(今度は酔っ払ったフリで…)
今回ティアは、同じ轍を踏まぬよう、自分のグラスは殆ど聖水じゃないかというくらい薄め、アシュレイのグラスには殆ど生(き)じゃないかというくらい濃くしている。
柢王と同じペースで飲んでいたアシュレイは、果たせるかな、かなり酔っ払っていた。
話題は、初恋になっており、面白おかしく、ちょっぴり切なく、柢王が自分の初恋話を終えた。(ティアはフィクションだとふんでいる)
「で、アシュレイの初恋は?まあ、まだ若いんだし、未経験でも恥ずかしくないけどな」と柢王がふると、ティアも「そうだよ、私にだって、未だそんな『女性』はいないもの」と、アシュレイが見栄を張ったり、「くだらねー」とか言って逃げないように予防線を張る。
恋愛には奥手のアシュレイに初恋なんかありえないけど、いずれその相手に自分がなれるよう鋭意努力中のティアは、ちゃんと未だだという確認をしたかった。
が、
「俺だって、初恋くらいしてらあ〜」
と、酔っ払ってちょっとハイ気味なアシュレイの返事に、ティアのこめかみにぴきっと筋が走る。
3歳からずっと見てるのに。そんな子はいなかったはずだ。となると3歳以前?!
実は姉上とか言うオチ?
「へへ、文殊塾の入学式の日に会ったすっげー可愛いコ」
潤んだ瞳で話すアシュレイに、ティアの顔色がさっと変わる。
(入学式には私もいた!そんな可愛い子いたか?)
(しまった、アシュレイの女の子の趣味は把握してなかった。興味なさそうだったのに!)
一瞬の間に、同窓生女子全ての10年前の顔を思い出し、あれかこれかと推察する。
(上級生とか?年上好みは女性もか?シスコンだし…)
(まさか、男?!)
(でも、アシュレイは男は強くあるべきとの考えなのに、可愛い男が好きとも思えないし…)
一応、ティアは同窓男子の当時の顔も思い浮かべてみるが、思い当たらない。
柢王は、焦りまくるティアを眺めて、ニヤニヤしている。
「その後すぐに『私は男だ』って言われて、初失恋も一緒だったけどさ〜、あははー。ぐー」
アシュレイは言うだけ言うと、そのままひっくり返って大の字に寝てしまった。
一瞬、びっくりした顔のあと、ティアは破顔一笑。
「柢王、聞いた?私のことだよ!アシュレイが名簿持ってティアランディアってどいつだーって言って…」
アシュレイに寄り添うと、彼の頭を膝の上に乗せ、嬉しそうに頬を上気させているティア。
「それって、おまえであって、おまえじゃないんじゃないか?」とは言えずに、「よかったな」とだけ柢王は返した。
自分は最初から「守護守天」として会ったけど、確かに何も知らずに出会ったら一目惚れしかねない美少女に見えたよなー、と思い出し、
「あの(記憶力皆無の)アシュレイが未だに忘れられないなんて、よっぽどだよなあ」と加えてやった。
ティアは更に幸せそうな顔で微笑み、うっとりと膝の上の寝顔に視線を戻した。
「で、ティア。おまえの初恋は…って聞くまでもないか…」
すっかり2人の世界に浸っているティアには、そんな言葉も聞こえてないようで、柢王は一人グラスを傾ける。
柢王は、幼い時から守護守天という重責を担っている親友の安らぎである、口下手で人間関係に不器用だけど、素直で正義感の強いもう一人の親友の気持ちが、友情から愛情へ変わる日が近いと良いなと、心から思う。
そして自分にも、そんな気持ちになれる相手が早く見つかると良いな、とも…。
<ティア17歳>
幼馴染の親友ティアと2年ぶりに交流が復活はしたものの、うっとりと蕩ける様な目で見つめてきたり、唇をぶつけてきたり、愛してるの何のと聞くに堪えないような言葉を何度も…と、どうも以前の親友と勝手が違い、戸惑う日々のアシュレイ。
かつての親友(自分的には今でも親友だが、向こうは恋人と言いたがる)は妙なやきもちを妬くのでリアクションに困ってしまう。こんなヤツじゃなかったはずなのに…。
今日も今日とて…
「アシュレイってば、リスのことはあんなに撫で回すのに、私には撫でてくれない…」
「だーっ。なんでてめぇを撫でなきゃいけないんだよ!」
「じゃあ、撫でなくて良いよ。その代わりこうやって髪の中に手を入れてくしゃくしゃって..」
「うるさい!」
と、不毛な会話が続いている。
「はあ〜。そういや柢王は人間界に行くんだよな〜、俺も一緒に行って暴れてえ」
溜息をつきながら、アシュレイは遠い目で窓の外を見る。
「ダメだよ、まだ、体が完治してないんだから。もうしばらく…、一緒?」
言葉尻を捉え、急にティアの目と声がきつくなる。
「君、私より柢王と一緒がいいの?そうだよね…子供の頃だって、柢王にはずいぶんスキンシップとってたよね…。頬に触れたり、抱きついたり、腕や足に唇を寄せたり….」
「へ?な、何の話だ?」
ティアが青白い炎を纏った様に見え、アシュレイは思わず後ずさる。
「こうやって頬に触れてたじゃないか!」
ティアは肘を90度に曲げるとそのまま水平に振り回した。
「うん、いいフックだ。じゃねえ、それは殴ってるだけだろうが!」
「それに抱きついて転げまわったり!」
「そりゃ取っ組み合いだ!」
「こうやって唇寄せて!」
ティアはアシュレイの腕を掴むとそっと食んだ。
アシュレイは慌てて振りほどくと「噛みついてたんだー!」と怒鳴った。
「私にはしてくれないのに…!」
「できるかー!」
守護守天であるティアは禁忌がかかっていて、人をなぐったり傷つけたりすることができない。だから自分もティアには暴力はふるえない。
が、先日も結界膜に囚われた時、ずいぶん殴ってしまって今更だし、つまらない話を延々されて、相当ストレスも溜まってる。
「いや..、今ならその望みかなえてやっても良いぜ…へへ…」
アシュレイはゆらりと一歩踏み出す。今度は彼の方に青白い炎が見えるようだ。
「ア、アシュレイ…?」
ティアはひきつった笑みを浮かべながら後ずさる。
「…濃厚じゃなくて良いからね・・・?できれば寝台での『取っ組み合い』が希望なのだけれど…」
アシュレイのどこかで「プチ」と何かが切れた音が、ティアには聞こえたような気がした。
アーの髪はまっかっかです。
でも、アーはそれまで、自分の髪の色など気にしたことはありませんでした。まっかっかの髪だと霊獣ギリを召喚できるので、それだけは気に入ってましたが。
でも、ある日こんな噂を聞いてしまったのです。
『守護守天様は黒髪がお好みらしい』
それを聞いて急に不安になってしまいました。
親友の柢王は黒髪で、自分の癖毛とは違って真直ぐです。
守天様のお日様色の真直ぐな長い髪と近いような気がして、二人が並ぶととってもお似合いな気がして、仲間はずれになった気持ちになります。
赤毛の多い南領でもこんなに燃える様な赤色の人は知りません。
自分だけ…。
いつのまにか、「黒髪が好き」→「赤毛は嫌い」に、アーの中で変換され、悲しくなってしまいました。
いつも守天様に髪のハネを切ってもらってるけど、本当は見るのも触るのもイヤだったんだろうかと、どんどん不安になります。
塾の裏林に行き、こっそり黒髪に変化して、泉に映してみます。
自分の身分を隠したいときなどにはよくやることですが、改めて見ると別人のように見えます。もちろん、別人になるための変化なのですが。
「どうしたの?変化なんかして」
授業中だから誰も来ないと思ったのに、声のしたほうを振り向くと、そこには守天様がいました。
教室に戻らない自分を心配して探しに来てくれただろうことは判ってましたが、アーは守天様が自分の髪をどう思ってるかの方が気になります。
「なんで俺だけまっかっかな髪なんだろう」
「何があったの?!誰かに何か言われたの?」
「…別に…」
「私はおまえのストロベリーブロンドが大好きだよ?おまえの強さと優しさを表現した太陽みたいだもの!」
アーはにっこり笑う守天様に勇気を出して言ってみました。
「じゃあ、又髪のハネを切ってくれるか?」
「もちろん!いつでも切ってあげるよ」
そう言うと守天様はアーの頭を抱き寄せ、変化を解いた赤い髪に顔をつっこみ「大好き」ともう一度言いました。
アーは、柔らかなお日様の隣に、燃える太陽も似合うかもしれない。と、やっとにっこりしました。
さて、「守天様は黒髪が好き」なんて話はどこから出てきたのでしょう?はい。もちろん当の守天様が何かの際に思いつきで発した言葉でした。
それがこんなに反応してもらえるなんて!守天様は嬉しくてしょうがありません。
守天様は先ほど切ったアーの髪を、大事そうにしまいました。
アーの髪でいずれ枕を作るつもりです。そうしたら夢の中でもきっとアーに会えるはずです。ハネだけなので枕の量になるのはいつの日になるか…ですが。
それから、次はどんなネタならアーがひっかかって…もとい、興味をもってくれるかと、幸せそうに考え始めました。
守天様が幸せなら、人間界も幸せになるそうです。きっと人間界に幸せの光がふりそそいでいることでしょう。どっとはらい。
新書版よりー
「てめぇが恋人を作らないから、男共は皆悲惨な目にあってんだぞ!」
今日も、いつものように「守天に彼女をとられた」という先輩の文句を聞かされたアシュレイ。
俺だって好きな子をとられた、と答えたら、じゃあ何でそれでもティアと一緒にいるのかと返された。
−ティアは綺麗で優しくて頭が良くて、自分達とはぜんぜん違う。女子が好きになって当たり前じゃないか。それで親友をやめたりしない。
だけど、そんな彼女たちより、自分を優先してくれることも、恋人ができたらなくなっちゃうのかな…。
ティアに恋人が出来たら、自分達は今までみたいにずっと一緒にいられるんだろうかという不安もあり、先輩たちに文句を言われ続けるのも煩わしいのもあり、先ほどの言葉が飛び出してしまった。
恋人なんか要らないーそんな返事を期待してたのかもしれない。でも、全く違う答えがさらりと返ってきた。
「じゃあ、おまえが恋人になってよ」
想像だにしてなかった返事だった。
ふざけてんじゃねえ!と答えようとしたが、ティアの真剣な顔を見たら軽い言葉なんて出せなかった。
(俺、どう答えればいいんだ?!)
そして昼寝時にされる行為も思い出してしまい、もう涙目である。
ティアは溜息を一つつくと、助け舟を出した。
「大体、そういう話は先に柢王にしてよ。柢王にふられたって子達が、私に泣きついてくるのだから」
みるみる生気を取り戻したアシュレイは「柢王だな、よし!」と柢王のところへすっとんで行った。
ティアはその姿を見送りながら、もう一つ深い溜息をついた。
実は、「強い男が好き」という古来の本能を持った女子もいたのである。
が、可愛いアシュレイに色目を使いそうな女子は、全てティアがまなざし落としで洗脳していたのだ。
後に柢王にばれて「恋人には狭く、独占欲の塊」といわしめる所以である。
本命に使わないのは、術で心を縛るようなことはしたくないのか、鈍すぎて術がかかり難いと思っているのか..。
そして今日も気安く女子に声をかけ、「恋愛相談」という情報収集に余念のないティアであった。
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