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投稿(妄想)小説の部屋 Vol.3

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No.227 (2008/06/13 13:57) title:夕日も笑ってる
Name:薫夜 (51.143.138.210.bf.2iij.net)

数人の少年に囲まれて、今にも泣き出しそうな少女がいた。
そこに少女の兄が通りかかって「俺の妹に何をする」と少年達に殴りかかった。
けれど、自分より大きな少年達に次第に押され妹を守る事しか出来なくなる。唇が切れ血が流れ始めても少年の戦意は失われない。
殴られても殴られても立ち上がる少年に、少年達も引っ込みがつかなくなっていた。
「俺の兄弟をいじめるなっ!!」
燃えるような赤い髪がそのまま怒りを表しているかのような勢いで走ってきた少女達の姉に、少年達はあわてて逃げ出していった。
 
残されたのは傷ついてぼろぼろの氷暉と、安心して泣き出した水城と憤慨するアシュレイだけ。
「今度見つけたら、ぼこぼこにしてやるっ」
「ありがとう、姉さん」
涙を拭きながら水城が言った。
氷暉は自分の力で妹を助けられなかった悔しさに唇を噛みしめ、泣きだしそうな顔を見られたくなくてその場から逃げ出した。
 
人気のない夕暮れの公園に一人で座っていると、堪えきれない悔し涙が溢れてくる。絶対に強くなってみせると爪が食い込んで血がでるほど拳を握りしめた。
 
どれくらいそうしていたのか、人の気配に顔を上げると水城が隣に座った。
「ありがとう、兄さん」
「…助けたのは、アシュレイ姉さんだ」
「兄さんが来てくれて、嬉しかった」
水城が腕にしがみついて、そこから伝わってくるぬくもりと優しさが、氷暉の荒んだ心を慰めてくれる。
「兄さん、怪我は大丈夫?」
「ああ、大丈夫だ…っ」
心配そうな水城に平然と答えようとして、忘れていた痛みに呻いてしまう。
「…かっこわる」
「全然、かっこ悪くないよ。兄さんは、あたしの自慢の兄さんなんだから」
胸を張って言い切ってくれる水城に、守りたいものは彼女の笑顔なのだと改めて心に刻みこむと自然と笑みがこぼれた。
「そうだな、水城は俺の大切な妹だ。誰がなんと言おうと、水城の髪は綺麗で俺は好きだからな」
水城が少年達に囲まれていた理由は聞かなくてもわかっていた。珍しい色の髪を触らせろだろう。水城が、髪の色について言われるたびに密かに落ち込んでいるのを知っている。
それなのに、氷暉が落ち込んでいれば慰めてくれるのだ。
へへっと照れたように笑う水城に兄としてまだまだだなと思う氷暉だった。
「そろそろ、夕飯だな。帰るか」
うんと頷いた水城と手をつないで氷暉は歩きだした。「帰ったら傷の手当てしてあげる」
「自分でできる」
「ダメっ!あたしの所為なんだから、やらせて!!痛くて泣いちゃっても気付かないふりするからねっ」
「誰が泣くか」
笑いあう氷暉と水城の影が夕日に長く伸びて重なった。


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