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投稿(妄想)小説の部屋 Vol.3

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No.17 (2006/10/02 12:27) title:憂愁なる秋の祭典
Name:碧玉 (210-194-208-95.rev.home.ne.jp)

 ガシガシ、コツコツ、・・・。はあ〜〜〜・・・。
 ここ数刻、この状態が東領元帥棟執務室で続いている。
 たまには一人で解決するのもいいだろうと放置していたがいささか耳障りになり桂花は整理していた書類から顔を上げ声をかけた。
「何してるんですか?」 
 先ほどからの柢王の奇怪な様子を桂花は仕事とは思っていない。花街警備の報告書や軍の通知や編成などは柢王の意見を聞き桂花本人がまとめているのだから。といって私用に手紙を書くほどマメな男ではない。
 いったい???桂花は立ち上がると柢王に歩み寄り机上に乗っている書類をそっと取り上げた。
「『第×××回 文殊塾 大運動会』・・・?何ですか、これ?」
「文殊塾恒例、四国対抗の競技大会だ。人界では神にささげるスポーツ大会があるらしんだが、我が子の成長と参観を兼ねて塾でも早々と取り上げられてる風物行事さ」
「それで、あなたは何をされてるんですか」
「その運動会での親子競技と保護者競技の種目と様々な規制を創案依頼されたんだ」
「毎年恒例ならお約束競技みたいのがあるのでは?」
「子供のはな。こーゆーのは親がヒートしちまうんだ。年甲斐もなく張り切りすぎてぎっくり腰や後日の筋肉痛、神経痛はあたりまえ。靭帯を切っちまったり、昨年なんか『棒ひっぱり競争』で膝の皿割っちまうなんて惨事もあったんたぜ」
「・・・・・」
「ま、今年はティアが控えてるから心配ねーけど」
「守天殿が、来賓ですか?」
「名目上はな。ケド実際のところは養護員というか救急隊というか」
 この天空界の象徴でもある守天殿をそんなことに使うなんて・・・魔族は何を考えているか分からないというが桂花にしてみれば天界人こそ正にミラクルだ。
「今回は西の水帝王とうちの親父が問題なんだ」
「蒼龍王様?でも王には塾に通う年頃の子息女なんていないじゃないですか」
「ああ。だが親子競技といっても保護者が参加してもいいわけでさ、翔王に太芳の代理出場を訴えてたぜ。年が近いから水帝王にライバル心あんじゃないか?太芳は昨年の未就園児競技で懲り懲りだろうけど」
「未就園児競技?」
「塾に通う前の子供のかけっこがあってさ、打倒カルミアと親父特製のミックスジュース飲まされ鼻血出してぶっ倒れたんだ、強すぎたんだなぁ。あれ以来、太芳は親父を避けてたけど参加登録に翔王じゃなく親父の名があるとこみると捕まったんだな、気の毒に」
「・・・競技選出の方は分かりました。様々な規制というのは?」
「こないだ城に顔を出したとき東国(ウチ)の仕立て屋に会って聞いたんだが水帝王がカルミアにすごい衣装仕立ててるみたいでさ、規制ひかねーと今にファッションショーになっちまう。たたでさえ勝利人はヒートしてるってのに」
「料理人が?」
 桂花には何もかも見当がつかない。
「そ、昼に食う弁当ひとつとっても大変なことでさ、各国のトップ料理人が最高の食材と腕を振るった創作物なんだ」
「・・・・・」
 くだらない。あまりにもくだらなすぎると桂花は思った。
「俺やアシュレイが卒塾して一旦は落ち着いたらしがカルミアと太芳が入塾したからな、まったく王族ってのは」
「あなたやサルの時も騒ぎに?」
「まあ、な。特に炎王が・・・あそこは親子そろって負けず嫌いだからさ。『Red Scorpio』なんて赤と金モールでド派手な旗つくってきたのはいいんだが、デザインがアシュレイでさギリを模ったらしいが、ありゃとヴ見てもザリガニというかヤドガリというか、くくくっ、アイツ絵心ないからさ」
 思い出し柢王は吹き出した。
「それだけ力が入っていたのなら南国の圧勝だったと?」
「いや、塾の先生方王族には配慮するからさ。ウチの親父を気遣って『借り物競争』なんて競技を作り出したんだ」
「借り物競争・・・ですか」
 きっと蒼龍王好みの品が書かれていたことだろう。
 もはやリピートする桂花の口調には力がない。
「それが縁で親父付の侍女になった者も結構いるんだぜ。あとは、そうグラインダーズ殿を将とした騎馬戦や取り囲むチアガールなんかに炎王も親父も大絶賛だったな」
 聞いているだけでリアルに情景が浮かび上がってくるようで桂花は痛み始めたこめかみをそっと押さえた。
「おっと話は逸れちまったけど、この行事で確実に増えるだろうティアの心労を少しでも減らすようにと四海(文殊先生)に依頼されたんだが・・・」
「なるほど」
 守護主天の秘書をしている桂花は息子や妻との諍いによって及ぼされた暴風雨や雷雨の人界被害に当たりをつけ納得した。
 そして李々と人界にいたとき夏には炎天下が(炎王が予行練習に燃えていたのかも)秋は長雨、台風があったことを思い返していた。
「ま、頑張ってください」
 言って桂花は何もなかったかのように自席に戻った。
「桂花ぁ〜おいおい、そんなこと言わずに一緒に考えてくれ〜」
 柢王の泣き落としを背中で聞きつつも虫を決め込み、桂花は一つ大きく息を吐き出した。


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